生臭さが温度の絡む空気に乗ってくるという理由で、魚介類がそれほど得意ではない私にとって、冬の時期は安心して口に出来る季節なのだが、今年はなかなかそちらに頻繁に箸が延びない状況。
それでも「R」の付く月に入ったからと、各地で牡蠣を食する。なぜか京都で伊勢湾の牡蠣をいただき、広島では瀬戸内の満干の差の大きな汐で育つ牡蠣を、そして、やっぱり私には、日本海の冬の寒さが育てる能登の牡蠣が一番美味しく感じる。ということで、牡蠣を食べに能登・中島に出かける。この旧中島町(現・七尾市中島町)は、秋の二ヶ月間、仲代達也率いる無名塾の『マクベス』が、演劇のためのホール「能登演劇堂」連日満席の中公演されたが、それが終わるとひたすら海風と静けさに包まれる町になる。そんな町の海岸沿いの道路には「かき」の幟(のぼり)が所々にはためいていて、数年前からひと冬に2~3回訪れるのが『海』というお店。牡蠣の酢の物、殻付き牡蠣の網焼き一人10個、牡蠣フライ、牡蠣の釜飯、もう一つ何か小皿があったな・・・・このコース料理で3000円なり。冬になると東京、大阪など太平洋側の人々から、「カニだカニだ、カニ食いに日本海に行こう!」などとわめかれるのだが、食べ放題!だと銘打って、去年獲れた冷凍物を、それもロシアだか北朝鮮産を、スカスカ身のものをひたすら囓ってしゃぶって高い料金を払うくらいなら、牡蠣のコースを腹一杯食べるのがよっぽど冬を感じられると思う。とりあえず、このぷりぷり感を感じてもらいたい。
ぷりぷり、といって思い出したが、言葉で表すと「ぶよぶよ」の方があたっているものが、途中に立ち寄った千里浜の「なぎさドライブウエイ」の波打ち際に大量に打ち上げられていて、車のタイヤも時折スリップするくらいだった。そのぶよぶよはエチゼンクラゲ。ニュースでは今年は大量発生して、日本海を北上し、津軽海峡を通過して太平洋側を南下しているとのことだったが、海岸見渡す限りクラゲの亡きがら、カモメも食わないこの風景を見ると 実感がわいてきた。