とは言っても、ミラノの中心部から地下鉄で40~50分かかるミラノ郊外の寂れた場所に、巨大な展示会場はあり、しかも、10日間という長い長いの会期中、午前10時から午後10時半までの開催時間で、その間しっかりと拘束されていたため、町に出かけて観光することも出来ない日々。
毎日ヘトヘト・・・・
一日の中で展示会ブースでやることと言えば、ひっきりなしに流れ込んでくる入場者の様子を窺いながら、立ったり座ったり、昼食と夕食の食事時間が近づくと交代で展示会会場内の色んな国のレストランや軽食売り場で空腹を満たし、ちょっと退屈になったら色んなブースに足を伸ばし散歩がてら買い物をする。
午後9時を過ぎても客足はそれほど衰えることもなく、反対に一杯飲みながら会場で騒ぎ出す若い連中が増えてきたりする。それでも、10時には店じまいをして、氷点下になる外に出て、地下鉄の駅二つ隣の、回りに何も無いホテルにたどり着いてシャワーを浴びて一杯やるかの頃には日付が変わってしまう。
これだけの状況の中で、3度目とはいえミラノをもしくはイタリア人を語るのはおこがましいことこの上ないが、とりあえず、今回の滞在で感じたイタリア人像。
1)きわめて時間にルーズである。
ラテン民族だからアバウトさはそれなりに覚悟していたが、これほどひどいものとは・・・・
展示会前日の昼過ぎにミラノ・マルペンサ空港に到着し、「5時までに必ず設営は終えるように!」とうるさく主催者から連絡があったので、タクシーで一路展示会場へ駆けつける。
ところが、うちのブースには荷物が届いて無くて、しっかりバリケードされていた。
隣のブースのお兄さんが一生懸命設営しているその後ろの白い壁がうちのブース。
駆けつけた通訳が運送会社にがなり立てたが全くらちがあかず、そこへうるさく注意してきた主催者の担当者がやってくる。
「どうなってんだ?!オフィシャルの運送会社がこんな状況だよ、どうしてくれるんだ!」と喚くと、
「オフィシャルというのはこの展示会場のオフィシャルであって、うちがオフィシャルとして指定したわけではない」との回答。ラテン系はルーズだけじゃなく責任回避も軽々とやってのける。
2)日本という国を全くわかってない
世界中の国々から「手工芸物産展」として毎年開催されているイタリアで一番大きな、もしかしたらこの手のものとしてはヨーロッパで一番大きな展示会とのことだが、あまりにも雑多すぎて、単なるお土産物物産展であった。
「他に日本の出展社はいないのか?」と主催者に聞くと「あと数件ある」とのことで日の丸を掲げた日本からの出展と主催者の言うブースに行ってみると、どの店も日本人の姿はなく、どこの国籍かわからないアジア人が、ほとんど偽物とわかる商品を何のためらいも遠慮も無く展示している。
おもちゃみたいな刀を所狭しと並べて販売しているブース。「France Orient」というお店。
どこからこんなガラクタ仕入れてくるのだろうかとビックリするものを並べる店。浴衣を着たイタリア人女性が「オリンピク」なるバッグを売っている。
SUSHI BAR なる店。もちろん日本人の板前の姿は見あたらない。試しに直ぐ横で「こんな気持ち悪いものよく食うな!」と大声で言ったが振り返った店員はいなかった。アサヒスーパードライとキッコーマン醤油の瓶だけはもしかしたら本物かも。
「どこに日本のもの売ってるの?」と主催者の担当お姉さんルシアナに聞くと、驚いた様子で、「偽物だったら私は許さないわ、即退場させる!」と息巻いていたが、「全部偽物だよ」というと、「上司が認めたからそれでいいのだ」と半分逆ギレ。
3)やけにタバコを吸う人間が多い。
それも人が満杯の展示会場の通路で、歩きながら吸うやつがそこら中にいて、しかも女性がきわめて多い。
化粧の厚いおばちゃんも、若いかわいい子もそこら中でスパスパ。おまけに吸い殻はそこら中にポイ捨てで、床一面吸い殻だらけ。おまけにゴミだらけ。10年前の上海を思い出した。
4)表示類に親切さが感じられない。
通勤の電車が遅れるのは日常茶飯事のようで、誰も抗議することもなく、そもそも抗議しようにも駅員が見あたらない。深夜11時発の電車が55分遅れで、寒いホームで待っていると風邪引いてしまうと思ったのか、前に立っていた客は突然ワインの瓶を空けてラッパ飲みし始めた。
これもみんな慣れているのだろうか、電車が速度を落とし始め、どこかの駅に近くなると、そこここで「次はどこの駅ですかね?」と他の乗客に聞く人がバタバタし出す。
ちなみにうちのブースはこんな風
まあ、ヨーロッパ経済はドイツだけで維持していると言うことが、よくわかった滞在だった。
ヒマだったので、詩が浮かんできたりして。
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世界の至る所に
穴が空いているのに
誰ひとり
気がつかない
耳の後ろには
あらかじめ失われた場所があるのに
誰ひとり
気をとめようともしない
ネコが大げさにつまづく
彼はのんびりと
あくびの出来る道を
いつだって知っているはずなのに
大げさにつまづく
タイトルは「ミラノにて」にでもしようか。