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2013年3月4日月曜日

雪の「かたち」その2 上高地

 前日降っていた雪も上がり、天気も曇り空から時折青空も見えるようになった朝。

 平湯温泉のバスターミナル8:45分発の「特急松本行」は、目的地は同じだと思われるいくつかのグループを乗せて出発。乗車時間約7分の次の停留所『中ノ湯』で下車。
同じバスに乗ってきた10人ほどと、松本方面からタクシーで乗り付けてきた10数人が、冬期閉鎖のゲートをすり抜けると、環境省の腕章を付けた国の職員らしい3人が、「入山届けを書いてください」と人々に告げて、私らしっかり仕事してます、と言う感じで、何かを記録していた。
 

 釜トンネルの前、それぞれのグループが準備をして、期待に胸をふくらませつつ、「やっぱり寒いよな・・・・」という表情も忘れずに次々とトンネルの闇の中に消えていく。
温度計は持っていなかったけど、出発したバスターミナルが氷点下5℃だったから、この時点で氷点下10度は下回っていただろう。


 本当に真っ暗な中、ヘッドライトのわずかな明かりに道路脇の白線を映し出し、靴音を響かせて前に進む。緩やかとはいえ傾斜の着いた暗闇に寒い中息が上がってくる。

 歩くこと40分。ようやく闇の世界から白銀の世界に抜けて、
眩惑する視界をこらしてみると、なんと少なくとも50人はいるだろうという団体が目の前に出現してきた。
「は~い、3班の人はこっちに集まってくださ~い!」と静寂が売り物の冬の上高地に雑踏ができて、しかも、水戸黄門の印籠みたいに「何とかNPO」というお揃いの腕章をしているではないか!
やっかいな連中と出くわしたものだ・・・・
 

 案の定、凍結した林道を横一杯になって歩き出したり、シャッターチャンスだ!とか何とかわめいてカメラを次々と撮り出したりとたびたび道をふさぐ始末。おまけに団体の多くの人間用のスノーシューをアルミ製のリアカーに積み込んでいて、これまた凍った道をあっちへふらふらこっちで引きづるという有様。
 

 
 それでも、道のカーブを曲がるごとにだんだん姿を現す穂高の山々に気を静めながら、途中でスノーシューを履いてどうにか大正池まで到着。
 
 振り返ると焼岳がどっしり、かすかに頂上付近から噴煙が見えた。
 

 

 例の団体が記念撮影をしている間に逃げるように自然研究道の踏み跡を進み、
大体の方向を定めて森の中の新雪の上をザクザクと歩いていくと、動物たちの小さな足跡が時折目に付く、
これはうさぎだろうか・・・・

森の中を進むと、これはリスかな。

冬とはいえ、森の中は鳥の声があちこちから聞こえてきて、

寒さをしのぐため丸くなって、どう見ても大柄だが「コガラ」などがいたり、


 梓川の対岸からは時折猿の集団の声が聞こえたりする。

 今年の田代池はちょっと雪の量が多いようだが、水はいつ来てもきれいに透き通っている。

 田代橋

 ここ数年、毎冬訪れている上高地を、今年はもっとゆっくり眺めてみようなどと思っているうちに、
帰りのバスの時間が近づいてきて、合羽橋までたどり着けず引き返すことにする。

 
  
 大正池で冷たい水に頭を突っ込んでエサを採るカモの群れがいた。


 

そうそう、平湯温泉の温泉街から見た雪山はこれは西穂高なのか奥穂高なのか、と思っていたら「笠ヶ岳」のようだ。
風呂上がりの何でもない時間に、今年はこんな「かたち」を見ることができた。

「春乃色」

 各地で梅祭りが開催されてはいるものの、北海道では豪雪で立ち往生した車の中で亡くなった方もあったというこの週末。

 時折雪の舞う富山県南砺市の福光、ここ最近お気に入りの「どじょうの蒲焼き」屋さんで蒲焼きを10本(1本おまけ付きで11本)購入して、さて、昼飯時だが、車の中で蒲焼きをかじり出すのもどんなものかいな、と町をうろつくと、何だか古ぼけた小学校かお役所の廃屋のような建物の前に、車が何台も停まっていて、何かいな・・・と見上げると
「春乃色食堂」とあった。

地元民に聞くと、知る人ぞ知る素朴な食堂だとのこと。
建物の壁の色もはげていて、それが実に味がある!と早速入ってみることにする。

玄関の「営業中」の看板がなければ、ほぼ通り過ぎてしまいそうな感じで、
風が吹き込んだらぶらぶら動き出す「食堂」と書かれた扉を押すと

 ほんわかとおでん特有の湯気のにおい。
小さなテレビからは「お宝探偵団」の画像と音が静かに流れている。

 4人掛けテーブル3つとおでん鍋前カウンター席があり、若い頃は看板娘とおぼしきおばあちゃんと、もしかしたらお孫さんかなと思わせる若い青年二人でやっているようだ。
ふっと、子供の頃通っていたお好み焼き屋を思い出してしまった。

 システムがわからず周りを見ると、10人ばかしのお客さんたちは皿に乗った色んなおでんをつついていて、時折、カウンターの向こう側の大きな四角いおでん鍋の前で注文をする客とそのオーダーを鍋の中から取り出す店の青年の姿。

 とりあえず、ネタをのぞきに行きおでんを注文し、ついでにほとんどの人がセットで並べていたのでどんぶりご飯たくあん付きを一緒に注文。
こんにゃくがいくらで、がんもはいくら・・・・などという面倒なことはしないようで、
皿におでん乗せれるだけが料金基本のようで、このセットで530円

 もともと「シナそば」屋さんとして昭和20年台に開業したという当時のモノクロ写真も飾られていて、ひっそりと土地に根付いている食堂のようだ。
 

 今度はその名の通り暖かくなってから、昼間っからおでんをつまみながら一杯やりたいような店だった。