Powered By Blogger

2012年7月5日木曜日

ジャケ買いオヤジの独り言 北欧ジャズ

それにしても、古くはレコード盤、ついこないだまではCD、
一度CD屋さんに入ったら、ジャズのコーナーから始まり、懐かしのロックで「このジャケット懐かしい~!」と思わず声に出して、落語コーナーで志ん生全集に見とれ、コーナーを一気に移動してチェロソナタを探し、ジャズコーナーに戻り視聴のはしご・・・・・
こんな風にしこたま時間をつぶせる場所がきわめて少なくなってきた。
音楽配信でダウンロードなどと言って近頃は簡単に済ませているようだが、それでミュージシャンは自分の主張やスタイルを伝えたつもりでいるのか不思議でしょうがない。

「要は音楽が聴ければいいじゃんか!」という考えが、例えば、香典袋に入れないで香典を現金で持っていくような、いわば節奏のなさも感じてしまうのは私だけなのかな?

まあ、そんなことは人の勝手だからどうでもいいが、今回は銀座に出たついでに「山野楽器」に寄ってくる。
そのジャズのフロア、この響きがいいね!フロアごとジャズですよ!
そこで見つけた北欧ジャズの一枚。北欧ジャズという言葉自体はじめて聞いたが、
お店の店員さんが書いたメッセージがひらりとぶら下がっていて、これが良かった!
「正直、知名度はほとんど無いのだが、ものすごく透明度の高いピアノの音とそれに続くセッションの響き・・・・」遠慮があってなかなかここまでは書けないものだよね(笑)

ジャケットにすでにスエーデンの国旗がひらめいていて、
タイトルがなんともまた
"Birth~Longing For Sweden~"
してミュージシャンは
Yuichi Kudo Trio
ほんと、知らない人。
中を開けるとこれでもか!のスエーデン国旗

でも、こうやってみるとこの国旗の色遣いはすてきですよね。

さて、曲を聴いてみた。
う~ん、む。む。む。む。
これが北欧のジャズか・・・・
真冬のスエーデン、イエーテボリにピアニスト工藤雄一氏は乗り込み、現地で活躍するベーシストの森泰人氏とドラマーのヨーラン・クローン氏との初めてのセッション。
「身震いするほど感動的だった」と工藤氏の談。

私も聞いていて何度も身震いした。
本当にピアノの透明感はすばらしい!
6曲目のブラームスのシンフォニーや最後の10曲目のシューマンのトロイメライなどと言う曲も全然場違いじゃなくて、
極寒の地ならではの澄んだ音なのか、スタンウエイ・Dのなせる技なのか・・・・

2012年7月2日月曜日

扇風機の回るスタジアム

「ムエタイMuay Thai」と言われても、ちょっとぴんと来ないが、「キックボクシング」と聞けば、
キック、キ~ック、キックの鬼だ~!の沢村忠、そうそう、真空跳び膝蹴りだ!と、かつてテレビに釘付けになったアニメソングを口ずさんでしまう。
とはいえ、正確にはキックボクシングとタイの伝統的格闘技のムエタイとは別の種類のものだとのこと。

日中の暑さもそろそろ収まってきたかなと感じる夕方、バンコク市内の地図にBoxing Stadiumという表記があり、地下鉄をLumpinee駅で途中下車してみる。
ありましたがな。それほど大きくは感じられないものの、メインゲートの上には選手たちの顔写真がぎっしり。人がわんさか集まって、今日の試合のおもしろさがどこかなどを、口々にわめき立てる様子で、格闘技の熱気がじわじわ伝わってくるではないか。(となんだか椎名誠風になってしまいそうだ)
ただ、その喧噪の中に歴史を感じたのか、風情の感覚が走ったのか、後楽園ホールでもなく、両国国技館でも、卯辰山相撲場でもなく、なぜか一瞬、浅草演芸ホールを思い出してしまった。
とそのとき、どこからとも無く音楽が流れて、喧噪が一瞬にして沈黙となり、人々はなぜか直立不動になっている。

なんじゃこれは?チケット売り場はどこじゃ?と動こうとすると、愛想のいい小太りのおばちゃんが英語で「お兄ちゃん、動いたらあかんで、今はじっとしとりなはれ」と言ったかどうかは定かではないが、何しろ動くなとのこと。なんでも、この音楽はタイ王族をたたえる歌で、毎日朝8時とこの時午後6時に流れ、その曲の間は直立不同でいなければならないとのことで、これには罰金刑もあるようだ。

ひとしきり曲が終わると、待ってましたとばかりにさっきのおばちゃんが近づいてきて、首に掛けたカードはオフィシャルのチケット販売人の印だと告げ、「何と言ってもリングサイドが最高でっせ!すぐ近くで選手が見れるし、選手の控え室まで入れて、おまけに選手と記念撮影だってできるで、どうやお兄ちゃん!」「はいはい、一人2000バーツね」と言って入場券代わりのシールを胸に貼り付けられた。

リングサイド2列目に案内されて、入ってすぐに目に付いたのが、天井で回る大きな扇風機の数。
スタジアムと言っても、昔観に行った「木下大サーカス」の雰囲気で、完全密封の建物ではなく、風通しのために屋根の下がぐるりと空間になっていて、外の空がそこから見える。
ちなみにリングサイドは欧米人や日本人等のアジア人、いわゆる観光客がほとんどを占めていて、そんなに高い入場料はとうてい払えない現地の客は、金網で仕切られたその外側の半立ち見席から観戦するようだ。

ムエタイの特徴は何と言っても、試合前にやるちょっとひょうきんな(本当は真剣なのだが、そう見えてしまう、ごめんなさい!)動きの踊り「ワイクルー」
所属事務所のコーチや両親に感謝し、神に勝利を願う踊りだとのことだが、基本形はあっても選手一人一人オリジナル性があるようで、なかなか見ていて楽しい。

その踊りが専属の生楽団のまったりとろ~りとした音楽に乗って、一通り行われる。楽団でもっとも目立つ音が高音域を外したようなクラリネットらしきものの音で何だか蛇遣いの笛の音のようだ。それを太鼓が遅れないように追いかける。


さて、ワイクルーでひとしきり踊るとキャンバスにもしくはコーナーマットに頭をすりつけて祈りを捧げる。
一試合、3分5ラウンドの試合が次々と組まれていて、大体前半1、2ラウンドは様子見で軽く対戦するが、3ラウンドから以降になると選手の汗の多さと彼ら形相も変わり、金網の外の観客たちの歓声も大きくふくれあがってくる。
ちなみに地元の客は試合一つ一つに「賭け」のシステムに幾ばくかの金銭を投資していて、競馬場や競輪場のような熱気と声援がだんだん大きくなって、渦のようにスタジアムを駆け巡っていく。

会場の盛り上がりをものすごく感じるのが、セコンドの控えコーナー。
おそらく所属事務所と言っても家族経営で、その一族選手の家族などが投げかける声援とそのアクションは真剣そのもの。
汗が飛び散り、マウスピースが転げ落ちる。
でも、4試合目、5試合目とプログラムが進むが「キックの鬼」で育っている私たちには、KOシーンがないのに、何だかちょっと気抜けしてしまう。行け!そこや!真空跳び膝蹴りや!!と言ってもそんな派手なシーンはない。キックの炸裂する音や顔面にパンチが入ったとわかるシーンはあるのだが、一番長いシーンは首を抱えての「首相撲」の体勢。
これが実はムエタイのムエタイたる真骨頂のようだ。首を抱えながら首投げに持ち込んだり、膝蹴りをボディーに打ち込んだり、その二つの技には館内から待ってましたとばかりにそれまでと違ったわき上がるかけ声が四方から飛んできた。
日本の相撲でも脇の差し合いや回しの取り合いに通の視線は行ってしまうように、ここでは首を持ってからの技が一番の評価のようだ。
館内の熱気についつい冷えたビールの杯を重ね、結局、3時間で7試合を観戦していた。
トイレに行く通路になんでもないようなテーブルと長いすがあり、そこが選手の控えスペースのようで、さっき試合していた選手がユニフォームのトランクスをきれいにたたんでいたのがすごく印象的だった。