雪国ではポケットに手を突っ込んでいると雪道などで転んだ時に手で体を支えきれなくて、頭を打つことが多く、冬場は致命的な場面を招くこともある。
私が何やら歌を口ずさみながら、あまりにポケットをたたいたり手を突っ込んでいるので、母親はポケットを縫い付けてしまったくらいだ。
ビスケットが食べたかったんですよね。地方にもようやく高度成長の波がやってこようとしている時代の、ちょっと切ない思い出。
誰でも、いつもスラックス、ズボンのポケットに入っているもの、もしくは潜り込ませておくものが一つや二つあると思うが(無いかな?)私の場合、この三つ。
まず、右上の青いやつはいわゆるティッシュペーパー。
それも日本でよく使われる駅前で広告をはさんで配っていたり、コンビニで4個パックで売っているポケットティッシュの類では無く、おそらく原産国はドイツだと思われるが、ヨーロッパに行くと自分用の土産で一番スペースをとるほど買い込んでくる、この『TEMPO(テンポ)』というティッシュぺーパー。
ちなみにティッシュペーパーの「ティッシュ」の語源は英語のtissue=繊維・組織だとものの本には書いてあるが、私はドイツ語のtisch=テーブルが語源だと思っている。このTEMPOを開けてみると中からはテーブル用ナプキンに近い、日本のティッシュの3~4倍近い厚みのしっかりした紙が出てくる。食事などに使う口の周りを拭いたりする紙のことなのだから、テーブルで使う紙=Tisch Papierじゃないのかな?
要はそれくらい分厚くしっかりしていて、日本で「ちょっと、ティッシュ取ってくれ!」というシーンでドイツでは「ちょっと、テンポ取ってくれ!」と言うくらいポピュラーなものだ。反対に私が知る限りドイツでは日本のような柔らかな素材のポケットティッシュは存在しない。
このテンポのいいところは、やはりその厚み。汚い話かもしれないが、一度で捨てるのではなく、何度も使えるのだ。もともとヨーロッパ人はハンカチで鼻をかむ人が多いが、それに比べれば極めて衛生的かも。それに、テンポが役に立つのが山登りの時、山では登山道でゴミを捨てることは御法度で、気温が下がってハナタレ状態になった時など何度も使えるので。ゴミが少なくて済む。ついでに曇ったメガネや雨に濡れたコンパスを拭いたりもできる。
もう一つこのテンポのいいところは、収納してあるビニール袋に開閉自由のテープで留めるフタが付いていること。一枚一枚ていねいに使えて、ティッシュとと一緒にクレジットカードが入るくらいの大きさなので、私は小銭をよくそこに放り込む。
このTEMPOも最近は世界進出していて、中国のスーパーでも買えるのだが、中国版は半分のサイズの小さなものがほとんどで、ちょっと使いづらいし、メンソールの香り付きとか、アップルの香り付きとか余計なものがあり、そのメンソールの香りと称するものは決してメントールではなく、線香の匂いにのような。まあ、そもそも線香フレーバーだと思って使っている。
ちなみにパッケージに印刷してある製造元は王子製紙(蘇州)だった。日本でも作ってほしいな。
さて、ず~と上の写真に戻っていただき、左手の黒い棒。
これはお気に入りの「耳かき」
そもそも、私の耳は湿度の変化に敏感で、極めて頻繁にかゆみを感じる。
手元に耳かきがないと非常にイライラしてきて、緊急時にはボールペンのフタ(特にビックボールペンの黒いフタが最適!)などを使ってしまう。
つげの木の国産の耳かきがフィット感といい、こすれ具合といい最高だと思うが、なかなかポケットに入ってくれる大きさのものがない。
そこでポケットに入る丁度いい大きさの両端が螺旋状になったゴム製の耳かきがこれ。この「螺旋状」の部分が優しくしっかりと獲物を捕らえて、かゆいところも掻いてくれる。黒い色はとれた耳垢がよく見えるのでいいのだが、落とした時にどこにあるのかがわからなくなるのが欠点で、車を掃除する際に座席の下あたりから2,3個発見されることがある。
ちなみにこの耳かき「グッドデザイン賞」を受賞している。
そして、もう一つのポケットの中の品は、「のど飴」
ちまたには色んなのど飴があるが、乾燥に弱い喉を持つ私にはとりあえずポケットに放り込まれている必需品。飛行機や電車の移動中、スピーチや講義をする際、なぜか依頼の多い宴会の司会役などの時には実によく役立つし、またまた山登りだと呼吸のきつい登り始めの10分間にはのど飴があると助かる。
特にお気に入りなのが香港のお土産にもらった『念慈庵(NINJIOM)』缶入りの上に一つ一つパッケージされていて、長く保管しておいて気がついたらべとべとになっていることがない。
味は色んなエキスが入っていそうな漢方系の味だが、それほどきつく感じず、中国とヨーロッパが融合した上品な味。喉にジワジワとしみてくる。そろそろ在庫が尽きてきたので、誰か香港で買って来て欲しいな。
という具合のポケット探偵団でした。
そういえば、「ポケットをたたけば~」の歌の2節目の歌詞「も一つたたけばビスケットが二つ」と続くが、子供の頃「そうか、入れないでたたいても出て来ないのか、ビスケットが子供を生むんだな」と思いついた私は、ビスケットを入れてたたいてみた。
当然、見事に割れて粉々になり、ズボンを脱いでポケットを裏返しにしないと中身が出て来ない具合になってしまった。