先日、異業種交流会の宴会の席で、私よりはるかに年上の方々が、口々に最近見た「大ヒット上映中!」とかいうアメリカ映画の話をしていて、何でもその映画監督、前回の大ヒット作から12年ぶりの作品だとかで、その手のコマーシャル戦略にまんまと騙されて、慌てて駆け込むたぐいの映画を観に行く人の気持ちが理解できない私は、「そんなに良かったんですか?」「それで、その主人公の顔には笑窪がありましたか?」と聞いてしまった。私としては冗談として言ってみたのだが、「何のこと?そこまでしっかり見なかったな・・・」と妙に真剣に記憶を辿っているようなお答え。ちょっとやり過ぎたかなと思ったので、「あばたも笑窪って云うじゃないですか」
まあ、そんな感じで大手系列の映画は、特にアメリカ映画は、広告にコストを掛けるほど、期待はずれの作品にしか出会ったことがないので、ここ数年は観る気は全くしない。もっとも、反対に今回私が観てきた映画は、テレビゲーム世代やそれを子供と一緒に興じているような人種には全く面白くも何もない駄作でしかないだろう。
さて、映画のタイトルは『ピリペンコさんの手づくり潜水艦』2006年のドイツの作品だが、舞台はウクライナのひまわり畑のまっただ中の小さな村で、言語はロシア語・ウクライナ語。ストーリーは至極簡単で、その田舎町に住む62才の年金受給のおじさんが、30年前からの夢である潜水艦を手づくりで完成させ(完成したと信じていたといった方がいいかな?)ひまわり畑から400km離れた黒海に潜るという話。田舎町であり、ついこの間までソ連だったところだから、部品もろくに集められず、当の本人も専門に学んだこともない軍人上がりの農家のオヤジだから、本当の手づくり。家族や村人にも半ば変人扱いされながらも夢を持ち続けてどうにか完成、その熱心さに村人も応援しだし、颯爽と出かけていくが、結局、この『イルカ号』進水はしたものの、ちょこっと動かしただけで色んな所が故障して、来年はもっとしっかり装備して出直すぞ!で終わる。
どこにもスリルも無ければ色気もないのだが、田舎のほのぼの間が、いつの間にか土の匂いが漂ってくるくらいホッとするものに変わるのを感じていた。
それと、気に入ったのが,鑑賞者全員にチケットと共におまけとして配られた、何とも懐かしい紙で作るおもちゃ。子供の頃、毎月届けられる本のオマケにこのてのものがよくあったことを思いだし、工作用のハサミを駆使し、液体糊で指をべとべとにしながら作ってみた。
完成してみると、実にいい感じである!自分に笑窪があることに気付く、そんな一瞬だった。
なんと、『山形国際ドキュメンタリー映画祭 市民賞』を受賞しているそうな。