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2010年9月6日月曜日

まくらを一つ  小三治の世界

 8月31日、「柳家小三治2夜連続特別講演」と銘打たれた小三治の独演会に出掛ける。
小三治と言えば本題の噺に入る前の「まくら」の面白い噺家で、高座の座布団の横に用意された湯飲みのお茶、といっても中身を見たことがないのでそうだと思うが、これも芸なのかもしれないな・・・、をすすりながら日々の出来事をぼそぼそとしゃべり出す。いつまで続くのだ?早く本題に入れ!と叫く客は誰もいなくて、なんならいつまでもそのしゃべりで終わってもいいと思い始めた頃に、いつの間にか古典落語の噺に入っている。
 この日の演題は一つ目は『欠伸指南』小三治の師匠の小さんが寄席でやったのを観たことがあるが、そのな「ぼそぼそ」という話し方が何となく似ていると思わせる。二つ目の噺は『馬の田楽』方言が通しで使われる噺だが、これがまた味が出ていて、「味噌を付けた馬見なかったけ?」でそのシーンが目の前に出てきそうで、思わず笑いが止まらなくなった。
 落語は、見ようによっては、いいオヤジ達が座布団の上に座って、良く訳のわからない話を勝手にしているだけの姿だが、そのオヤジが、人間味そのものを引き出して、時には色っぽい後家さんや怒りっぽい長屋の大家になって、その背景の風景や動くスペースまで広がりを持って見えてくる。言わば究極のイマジネーションの世界だと私は思っている。
  さて、今回の独演会には三味線を抱えて和服姿の色っぽく高座に上がってきた「柳家そのじ」の幕間を飾った。「落語の師匠の出囃子はほぼ全ておぼえていますので、リクエストいただければ三味線で弾きますよ」と言ったものの、本当にできるのかなこの若さで、と思ったが、「先代の・・・」とリクエストがあってもさらりとこなしてしまって驚いた。彼女は落語の師匠に弟子入りする人間には極めてめずらしい東京芸大邦楽科卒業とのこと。色んな人間が世の中にいるものだと改めて感じる。