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2013年11月4日月曜日

苦手なもの その1「バイキング」

 
 そもそも並んで待つ、ということが大の苦手である。
 ネズミやアヒルの闊歩する何とかランドの入場整理券待ち、これまた某わがまま次第放題の国からやってきたスマートフォンや新しいソフトの販売日の行列、Mのマークのハンバーガー屋のテイクアウトに並ぶ車の列、などなど、他人の勝手だからとやかく言うつもりはないが、コマーシャル戦略にまんまとはまっていながら、自分がさも特殊な人間だと勘違いして、間抜け面で列に並んでいる姿。残念ながら私にはとうてい出来ない世界。

 嫌いだから近寄らないで避ければ良いだけだが、避けられないケースもある。
駅のチケット売り場、空港のセキュリティーチェック、そしてホテルでの朝食のバイキングとかビュッフェと呼ばれるもの。
それにしても、何で「バイキング」などと呼ばれるようになったのだろうか?みんなで一斉に食べ物に突撃するのが、北欧の海賊のスタイルなのだろうか?
調べると、昭和30年代にデンマークのレストランのスタイルを見て、かの帝国ホテルが名付けた和製英語だそうだ。デンマークの人々やバイキングの子孫の方たちはこのことを知っているのだろうか?デンマーク大使館に聞いてみたいものだ。

 ホテルにチェックインして、「明日の御朝食はバイキングになっております」と言われると、しばし眉間に皺が寄ってしまい、近所に和風スタイルファーストフード屋さん、つまり牛丼屋さんはない?と聞きたくなる。
さて、朝のそのバイキングの時間帯になる。
エレベーターには、それらしき老夫婦、子供連れ家族、サラリーマン風おじさんなどが乗り込んできて、中にはホテルのスリッパなぞを履いてくる輩も居て、ピンクやグリーンの「朝食券」を手に握りしめていたり、胸のポケットからのぞかせたりしている。
「うっ、こいつらのんびりそうな顔してるな・・・」このあたりでもう列に並ぶ姿が浮かんでくる。

エレベーターの扉が開き、朝食会場に「私ら全然焦ってないもんね~」という感じでどやどやみんな移動していく。
会場の受付で係のお姉さんが「バイキングになっておりますので、ご自由にお取りください」などと声かけられると、「わかっているけど、どこが自由やねん!」と前の列を見て大きなため息をついてしまう。

 所詮、前の日の残り物の再加工品や業務用パックの中のものを大皿にざっと空けただけの食事のネタで、しげしげと眺めて品定めするようなものはほとんど無いのに、大きな皿を片手にみんな行儀良く並んでいる。鮭とアジの切り身の選択にそんなに時間掛けてどうしようと言うんだ!と後ろから喚きたくなるし、サラダのドレッシングぐらいどれでも良いじゃないか!と前の人間を押し倒したくなる。

 そんなときは、すこぶる「ご自由に」させていただくようにしている。
まずは、空の皿を持ちつかつかと人々を追い抜いて、列が無くても時間が掛かりそうな卵料理担当のコックのコーナーに行き、「目玉焼き、表裏とも焼いて」もしくは「オムレツ、タマネギとハムとチーズ入れて」と注文し、列に隙間のある場所のメニューを次々適当に取り、列の反対側にスペースがあれば逆流して皿に盛っていく、一度テーブルにその皿を持って行き、今度は比較的待つ人のいない主食(ご飯、パン類)のコーナーでご飯を盛り、ちょっど出来た卵料理を引き取る。
もちろん、並んでいる人々のご迷惑にならない動作は忘れない。
この時点でも一緒にエレベーターに乗ってきた老夫婦などは茄子の煮付けにしようか肉じゃがにしようか迷っていたりする。

もっとも、こんなことはほとんど食べ物に好き嫌いのない、「空腹が最大の美食」だと思っている私のような人種しかできないと思っている。