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2012年10月1日月曜日

悔しいけどホッとした百名山No.93『黒部五郎岳』2,840m

 何だか今年はリタイアの多い年だ。
いわゆる体力的にももう年なのかもしれない、などと思ってしまう。
9月15日~17日の3日間で、黒部五郎岳~鷲羽岳~雲ノ平~太郎平のコースを予定していたが、
残念ながら初日で力尽きてしまった。

 
 朝5時20分に神岡新道登山口を健脚二人と出発。
その二人というのが前の週北海道の芦別岳に登った「曉さん」と「恭子姉さん」
毎回二人はしっかり気合いが入っているのにはひたすら脱帽!

 何が影響したのか知らないが、いつもは最初の30分くらいで解放されるあえぐような呼吸が、それ以降もなかなか収まらず、だんだん前を行く二人の姿がしばしば見えなくなってくる。
それでも快晴の風景に引きずられるように進む。



鏡池平から寺地山を越えて、目の前に北ノ俣岳が見えてきた頃には、水場のある避難小屋で今日は限界かなと思い出す。
 
 
出発からちょうど5時間、きわめて遅いペースでその避難小屋に到着。

 こじんまりとかわいい姿でなんとも心地よくて、ほほえんで「よく来ましたね、ゆっくりしていって」と言っているようだった。
小屋の中は広さで10畳ほど、昨夜誰かが泊まったような温もりがあり、前後の扉を開けると心地よい風が突き抜けていく。
 心配げな二人を先にと送り出して、水場のパイプから絶えず流れ出す水の音を木漏れ日に聞きながら、うとうととしてしまう。
 小屋の回りを何かが動くので、よく見るとオコジョがせわしなく走り回っていた。
日が高くなってきたので、小屋の中で風を浴びながら横になる。
何とも心地よい時間だ。

 2時間くらいぼんやり寝ていたら、同じ年代くらいの女性がやってきて、まるで自分の家のように、こんな隠れ家みたいなところを、知る人ぞ知るという感じで、お湯を沸かしてお茶を飲み、昼食をとり、ぽつりぽつりと語り出し、決して互いの時間に侵入するような会話もなく、いつの間にかシュラフを出して寝てしまった。
 午後、突然ざ~っと雨が降ってきたが、二人とも起きだして気にすることもなく、ちょっとシュラフを深めにたぐり寄せただけで、いつの間にか日が暮れていた。
 しばらくして、ガスに火を点ける音で目が覚め、ついでに空腹もおぼえて、ヘッドランプの明かりの中で食料をリュックから取り出していると、お湯の沸騰する音と共に何とも良いにおいがしてきた。
「良かったらどうぞ」と差し出されたのはボイルしたソーセージ。口の中で肉汁が広がって、思わず「おいしい!」とうなってしまった。

 山でこんな心地よい時間を過ごしたのは始めてかもしれない。
あまりにも「登る」ことだけにがむしゃらになっていて、どこで楽にしていいか、忘れていたのかもしれない。

 もしかして今夜は二人でこの小屋か・・・・と妙に緊張してきたところに、がさごそと30代くらいの男女のペアが泥だらけになってやってきた。
「連休だからこの避難小屋も満杯で入れてもらえなかったらどうしようかと思っていました。助かった!」

この二人と一人と一人の合計4名がこの避難小屋で一夜を明かした。

 夜明けと共に黒部五郎岳をピストンして帰ると言っていた女性が出発し、どうしようか考えていた私もそれに後押しされるように、約1時間後出発。


稜線がくっきり見渡せて、ひたすら自分のペースで約2時間、北ノ俣岳に到着。
ここでようやく太郎平方面から来た登山者数人と出会う。

 赤木山を越えて、中俣乗越えとのんびりと歩く。
朝出発したときには、黒部五郎小舎に荷物を置いて鷲羽まで登ろうと思っていたが、
回りの山々の景色を見ていると、小屋に着ければそれでいいかと、ひたすらマイペースになった。
向こう側に雲ノ平が見えて、そういえば後の二人は今頃あのあたりで雷鳥に出くわしているかな、などと思いながら先を進む。


避難小屋を出発して約5時間で黒部五郎岳頂上に到着。


 頂上から今日の泊まりの黒部五郎小舎の赤い屋根が見えて、もう少しだとほっとする。

地図では頂上手前の鞍部に近いところに水場があるように表現してあり、
そこで昼食をと向かうがいっこうに見あたらず、結局大きなカールを一気に下ったところを流れる雪解け水がその水場だった。

水場の水の流れに沿って、直ぐそこだと思っていた小屋がなかなか現れず、
午後2時過ぎ、なんと避難小屋から7時間以上掛けて黒部五郎小舎にたどり着く。
ここも小屋の前に、好きなだけどうぞ、とみずの蛇口があるが、それよりも先にかすれた声で、
「ビールください・・・」と受付でつぶやく。
ついでに手ぬぐいも購入。
すこぶる快適な小屋でしっかりふとん一枚支給され、夕食後直ぐにぐっすり眠り込んだ。

 翌日は登山口までひたすら戻りのコース。
前日、避難小屋の前で「登山口午後2時集合」と言って分かれたので、今度はペース配分をしっかりしながら下山道を進む。
登りの時はあまり目に付かなかった避難小屋手前の木道も青空をバックに綺麗に見える。


 約束より30分遅刻して、これまたよれよれで汗がじっとりしみこんでいる二人と合流。
今回は自分の体力も再確認できたし、何が登山の楽しみかを教えてくれた山行だった。