白馬連山で軽装のグループがまだ雪深く残る稜線で命を絶ったのも、滑落したグループも西の方から来た登山者で、桜ももうとっくに散り去り、夏の日差しが見えてくる頃の九州から来れば、雪があるだけでも驚きだったのかもしれないが、その驚きはこの季節だから残雪があっても暖かな天気だ、とでも思ったのだろうか。
そんな白馬や北アルプスで遭難者が出た5月3日に、ガイドブック通りに「新緑」を目指して北八ヶ岳に出かけたのは、昨年すぐ近くまで行きながら登れなかった天狗岳に登ろうと思っていたからだった。
雪国の人間でもまだこんなに雪が残っているとは思わず、結局、天狗には会えず、しもやけになりそうなくらい雪持ちを進む羽目になった。
5月3日15:00 メルヘン街道などと言う名称の山岳国道299号線、白駒池入り口駐車場に到着。
白駒池を巡り、今夜の宿の「高見石小屋」に夕飯までには入るというルート。
しかし、入り口のゲートから観光客が登山靴ではないものの滑って転んでいるのを見て、これはちょっとやばいなと感じる。池を巡る遊歩道の分岐ですでにこの雪の量。
なんと、素人じゃあるまいに、この日は当然持参すべきアイゼンやスノーシューを持ってきて無くて、とりあえず山小屋にご迷惑がかからないようにと、池巡りをカットして高見石小屋へ。3歩に1歩くらいの割合で雪に靴を潜らせて進み、約1時間。
天気は小屋にたどり着くと同じくして雲が黒くたれ込み雨がぽつぽつとやってきた。
小屋の後方にある大きな岩のごろごろとある展望台も風が強くなるばかりで、全く霧の中。
この小屋の管理人さんは天体観測で有名な方で、天気さえ良ければ自作の望遠鏡で天体談義になるのだが、これもかなわず、早々と就寝。
翌5月4日、さてどうしたものかと一時は土砂降りになった空を眺めながら、池巡りにコースを替えることにする。
とりあえず、一度引き返し白駒池。しっかり冬の景色。
北八ヶ岳の池巡りは湿地帯にぎっしり生えている苔の見所でもあるが、それも雪の下で、看板だけが次々に出てくる。
麦草ヒュッテに抜けて、国道を渡るときに、駐車場脇に鎮座する水神様にとりあえず手を合わせる。
目指すは「雨池」だが、できれば雨は勘弁したいと、鹿の足跡しかない雪の中を進む。
歩くこと約2時間、雨池に到着。
かすかに青空が出てきて、人は誰も見あたらず、静かに時間が過ぎていく感じ。
そういえば、山小屋でご一緒した関西から来たカップルが、「ニュウ」経由で天狗岳を目指すと言って土砂降りの中を気合いを入れて出かけていったがどうしたかな?
また、雪のない時期に天狗には会いに来ることにしようと「渋御殿湯」のお風呂に向かう。