6月25日。早朝、東京を出発したときには、すでに雨がぽつりと来ていたが、登山口から徐々に雨はその量を増やしていった今回の登山。甲武信岳という名前自体「甲州」「武州」「信州」の三つの国の境界にあることから付けられた名前のようだが、埼玉から東京へ流れる荒川の源流と長野の千曲川と山梨の笛吹川が信濃川になっていくその源流もこの山にあるという、水源の重要な場所である。
北側の登山口「毛木平」から千曲川源流遊歩道を進むと、水源の山だけあり、登山道の3分の1くらいは水の音が聞こえていて、雨のせいもあってか苔むす森の風景がしっとりとやさしく感じられた。とは言え、晴れたら富士山や八ヶ岳、南アルプスも来たアルプスも見渡せるはずの頂上もその標識以外何も見えない状態で、改めて天気が山登りの一番の要因と感じる。
その疲れただけの印象の4時間半の登りを吹き飛ばしてくれたのが、今回の山小屋「甲武信小屋」。小屋にたどり着いたときには、今時めずらしいつぎはぎだらけの古い建物で、大丈夫なのかなと心配したが、それがじわじわと味わいある山小屋に感じてきた。
この小屋をこの日は一人で守っていた「爪(ヅメ)ちゃん」が、以前に聞いてその演奏に感動したという宿泊客の一人からのリクエストに答えてギターの演奏を披露してくれたのは、嬉しいハプニングで、癒し系というかニューエイジ系というか、その演奏は失礼ながらその風貌からはちょっと想像しにくい感じだが、聞き入っていた客の多くから「今後頃で山小屋やってないで、下で音楽活動やったらいい」と言われていたくらい。その夜は、狭い山小屋の寝床もちょっと幸せな気分になった。
翌日下りは三方山から十文字峠経由で、もう少し早かったらアズマシャクナゲの花が満開だった
とのことだが、少しだけ残った鮮やかな花を見ることができた。
帰り道、増富ラジウム鉱泉も『増富の湯』に寄り、ぬるいと言うより冷たく感じるラジウム温泉源泉に静かに浸かってきた。