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2010年5月9日日曜日

塩の山から

 登山後のいつもの楽しみの一つは温泉
今回は大菩薩嶺の麓の町、甲州市(旧塩山市)にある塩山温泉の元湯『廣友館』に泊まる。
かつてはこの辺一帯の宴会を引き受けていたのかなと思わせる古い温泉街でも一番大きな旅館だが、時代をひしひしと感じさせる宿だった。

この塩山という町、その名前から塩がとれる岩塩の町かと思いきや、塩山温泉の裏山の「塩の山」(554m)からその名前は来ているとのこと。
この塩の山の麓には向嶽寺という大きな臨済宗のお寺があり、そこから続く遊歩道を上って行くにつれて、本当に盆地の平地の中にぽつんとある山を感じてくるが、昔から四方のどこからでも見えて、頂上からは四方が見渡せると言うことから、「四方の山」と言われ、それを高嶽寺を開いた恵光大円禅師が、「四方」に「塩」の字を当てたのが始まりとのこと。
塩山は武田信玄及び武田一族ゆかりの地で、信玄公が31歳の時、比叡山より大僧 正位を贈られた記念に、京から仏師を呼び寄せ自分の体を模刻させ、髪の毛を漆にまぜて彩色し、作られたと言われている武田不動像や信玄の墓のある菩提寺『恵林寺』を散策してくる。

ワインの里にて

 今回の登山は、『白山の自然を考える会』のメンバーで、毎年GWとお盆の時期に一緒に登山をしているメンバーとの山行だったが、色んな職種のこのメンバーとの登山が面白いのは、単に山が好きで一緒に登るだけじゃなく、降りたあと、温泉や観光を楽しむというコンセプトで、百名山踏破を目指すミーハーな私にも居心地がいいグループ。
 
ということで、なぜか去年あたりからスケジュール作成担当になった私が、今回お楽しみに入れたのが「ワイン」
大菩薩峠の麓はワインの町勝沼、現在は旧塩山市と合併して甲州市となったが、ワインの原料ブドウだけではなく、サクランボ、桃、スモモなども名産でフルーツロードという通りには至るところに果樹園の看板。そのなかでも今回の目玉はいわゆる地ワイン。
大菩薩嶺の麓の日帰り温泉「大菩薩の湯」で、風呂上がりに飲んだワンカップの日本酒ならぬワンカップ赤ワインがすこぶる気に入って、その醸造元「まるき葡萄酒」を訪ねる。

なんだか醤油屋みたいな会社の名前からは想像が付かないくらいのモダンな建物が現れ、明治10年の起業とは思えないくらい。
入ると早速試飲、陽気なおじさん「もっち」さんがお薦めを次々と出してきて、この酒蔵のもう一つの名産「スモークたくわん」をつまみに、いいかげんいい気持ちになってきた。表には誰でもご自由にと仕込み水の蛇口もあり、ワンカップワインの中身と同じ『オリンピア』という銘柄の赤ワインの一升瓶といくつかのお薦めを買い込む。

私のお酒の選び方は、基本的にどんな酒でもその原料の味がしっかりするものがうまい!と確信している。だから日本酒は純米に限り、焼酎は匂いからしてうまさを醸し出す芋焼酎、ビールはヴァイスビール、そしてワインはちょっとざらつきを感じる赤ワインか、極力新しいフレッシュな白ワイン。
このざらつき感は地ワインには期待できるが、ここ「まるき葡萄酒」のオリンピアもいわゆる気軽に飲めるターフェル風の味わいがいい。

GW山行 百名山No.79 大菩薩嶺(2057m)

 明けて5月3日、温泉もしっかり疲れを癒してくれて、極めて快適な山小屋「三条の湯」で10時間も寝れば、スッキリ爽やか。朝食の卵ご飯もお代わりして6時半、小屋をあとに下山する。小屋の一つ下には渓流沿いに快適そうなキャンプサイトもあり、こんな山小屋ばかりなら山登りはすこぶる楽しくなるだろうと感じる。

林道ゲートから次の目的地の大菩薩嶺へ青梅街道を車を走らせる。さすがにGWで東京からも近いと言うこともあり、車の量が増えてきて、予定の裂石方面からの皇太子ご夫妻も登った人気登山道は混むのではと言うことで、街道から途中で人気も行き交う車もない林道を入り、六本木峠という北側からの登山道で大菩薩嶺を目指す。
尾根道を天庭峠~寺尾峠~丸川峠と進むと、峠の山小屋「丸川荘」から富士山がすっきりと姿をあらわす。

好天に恵まれているとは言え、北側斜面を登ると所々残雪で、昼過ぎに頂上に到着。
目の前に富士の姿を見ながら昼食をとる。


本日の泊まりは大菩薩峠の土産物屋の「介山荘」 その名は未完の大時代小説『大菩薩峠』の作者、中里介山からとったもので、入り口のドアを開けると緒形拳主演の同名の舞台のポスターが私たちを迎え、未完で41巻あるという小説やその逸話などが飾られていた。

その介山荘、これまた前夜の三条の湯同様快適な滞在ができた。お土産屋が本職だからかオリジナルせんべいが渡され記念にボールペンまで付いている。

夕飯は山小屋の定番のカレーライスであったが、
なんと晩酌用にと白ワインがもれなく付いてくるのは感動もので、なんだか山に登りに来た感じがしなくなってきた。昨夜同様、ここも元気な若旦那が頑張っていて、この辺り一帯の山小屋共同でスタンプラリーなどもやっているようで、何だかしかめっ面の登山マニアや壮年団体客ばかりに占領される百名山に、こんな作戦は若い人を呼び込むにはいい案だと感じる。
夕食後の夕日も南アルプスの山々のシルエットはぼんやりとではあったがきれいだった

翌日、5月4日は大菩薩峠から福ちゃん荘~上日川峠~雲峰寺と人気コースを辿り、途中の林道にはこれから登ろうという客を乗せたタクシーが次々と走りすぎ、上白川峠の駐車場のおじさん曰く「登山のお客様には100%駐車スペースは確保します!」

途中の登山道で植物のお勉強。
茎の模様と花の部分が首をもたげた様子に見えることから「マムシ草」とも呼ばれる「天南星(テンナンショウ)

それと、固まって咲いているのに、なぜかこの名前「一人静(ヒトリシズカ)」静御前から名前が来ていると言うが、どこがそうなのか・・・


GW山行 百名山No.78 雲取山(2017m)

 5月2日早朝というか深夜というか、午前2時過ぎに金沢を車で出発し、高速の勝沼インターを寝ぼけ眼で降り、当初予定の登山道入り口の「お祭り」より先の林道に車を進ませ、林道のゲートから歩き始めたのが午前9時近く。

睡眠不足の中、どうにか今日の宿の山小屋「三条の湯」のお風呂にたどり着きたいと、「東京水道水源林」の続く、後山川沿いを歩き、倒れるように三条の湯に到着。すぐにでもお風呂に入りたい気分だったが、軽く昼食を採って、山小屋のおじさんの「頂上までこれから行っても夕食までには帰ってこれるよ」と軽く言われ、昼少し前にリュックを山小屋に置いて頂上へ向かう。


途中何度も鹿の姿を見たが、それだけ出会うと言うことは、植物がそれだけ食い荒らされていると言うことで、新緑はまだ先かと枯れ葉を踏みながら進んでいるのは、実は鹿が新芽を食べ尽くして木が育たないだけかもしれないな、と感じて見渡すと、紫っぽい花の付いた青々とした葉がそこら中にあり、これが毒があって鹿も食べない「ハシリドコロ」という植物だそうで、この植物以外全て食べ尽くしたのかと空恐ろしくなる。



 頂上までの往復4時間半。転げるように三条の湯小屋にたどり着くと、おじさん曰く
「あら、頂上まで行ってきたのかね?お風呂に入りに行ったにしては遅いなとは思っていたが、行ってきたのか・・・」おいおい、あんたが軽く言うからだよ!と文句も言えないくらいぐったりで、夕食に出た鹿肉の燻製も効いたのか、6時過ぎには就寝。ちなにに鹿は害獣扱いされていて、基本的にどれだけ狩猟してもいいとのことで、銃の免許を持つ山小屋の若旦那が捕ってきているらしい。

GW山行初日、車移動で7時間弱、歩き7時間弱。山を二つ登ったくらい疲れて、なんと山小屋で10時間も寝た。