夜明け近くに他の宿泊客は早々に出発して、さて、私たちもと登山靴を履いている頃に小屋のオヤジが話しかけてきた「こんなに遅くに大丈夫かね?甲斐駒は8時頃から頂上はガス(霧)に包まれるんだよ」「な~んと?早く言ってよね・・・」そんな記憶に残る仙水小屋を出発したのは5時10分。
浮き岩ごろごろの道を進むこと20分で仙水峠に到着、目の前に甲斐駒ヶ岳の隣に立っている岩峰「摩利支天」が姿を現し、そこから急坂をゼイゼイ言いながら1時間半で駒津峰に到着、少し前から後ろを振り向く度に大きくなる北岳、間ノ岳と富士山の影と日本の高い山1着、2着、4着がそろい踏みで見えて、片や木曽駒ヶ岳、槍ヶ岳などのや穂高連峰の山々まで見渡せる絶景の場所。(写真の木に止まっている鳥は何という鳥かな?その後ろが北岳、間ノ岳)
そこから、目の前に立ちはだかる甲斐駒ヶ岳の巻き道を、足もとが砂に近い細かい石の道になり、甲斐駒ヶ岳(2966m)頂上に到着したのは8時40分。どうにかガスが登ってくる前に絶景が見れた。鳳凰三山とその奥に富士山。鳳凰山の尖った岩峰「オベリスク」もしっかり見えている。周りを見渡すと八ヶ岳・赤岳がすぐ近くに、遙か北の方に立山も見えていた。
標高2800mを越えると過去に何度か典型的な症状が出たので気になっていた高山病が来てるな、と感じたのは私だけじゃなかったようで、早々と頂上を後にして、下りは双子山を経由して、長い下りのジグザグを降りる。高校生以外の全員は疲労度もピークに達していて、時折、「あれは何か建物だ!」と幻覚が見えたりした(笑)
このグループとはすでに3年以上同行させてもらっていて、登山の経験も豊富で植物や全国の山の名前もコースもすらりと出てくる強者ばかりだが、いつも最大の目的は下山後の風呂と酒と飯というグループで、私にとってはただ頂上をひたすら目指すだけじゃない楽しみが性に合っている。で、この夜は趣向を変えて、というより、この長野県伊那市、山梨県南アルプス市にまたがる南アルプスの地にまだ誰も宿泊したことが無く、唯一、私が過去に台風の夜、伊那市駅前のビジネスホテルに泊まったくらい。結局、ここしか近くになかったという感じで、30分車を走らせてもコンビニの見つからなかった山奥の村で、ホルモン焼き屋をやっている店が、別荘だった家を素泊まりの宿泊施設にしている『平家の里』という所に泊まったが、これが大正解!!長い下山道でも「今日は焼き肉とモツ鍋が待ってます!」と励ましの言葉にしていただけに、村の火葬場の横を通り、車のナビが表示する道が無くなったその奥まで行って荷物を下ろして、隣の廃屋を眺めて「今夜は平家の落人の亡霊が出るな・・・」などとつぶやきながらも、こんな山でよくぞここまで出来たと唸らせるホルモンをはじめ肉の新鮮さは七輪での焼き肉といい、中国の火鍋風の辛いのとそうでないのを仕切ったモツ鍋といい最高だった。お酒も焼酎をはじめ色んなものがそろっているし、デザートのアイスクリームも最高で、何よりも東京出身の若い店主のお兄さんと、元気で明るくテキパキ店を切り盛りする北海道・室蘭出身の奥さん。ここはまた来たいな、と思ってるのは私たちだけじゃないようで、八王子から来たという同じ所に宿泊した10人くらいのバイクツーリングのグループは毎年ここに来ていると言っていた。 今度は鳳凰山か北岳に登るときにまた来ようと思った。
終わりよければ全てよし、の百名山73個目の登山だった。
終わりよければ全てよし、の百名山73個目の登山だった。