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2011年6月3日金曜日

ソルティジャズ 塩谷 哲のソロピアノ

 大好きなピアニスト「小曽根真」とジョイントコンサートをやっているというので、割とポップに仕上がったCDアルバムを1枚だけ買って聴いてみた塩谷 哲(しおのやさとる)のコンサートが金沢であるというので出掛けてきた。
 色んなミュージシャンとのコラボで生き生きとそのピアノの旋律を響かせている彼のCDしか聞いたことがなかったので、どんなしつらえでステージをやるのか期待して行ってみると、会場の金沢芸術村「パフォーミングスクエア」のど真ん中の床にぽつんとヤマハのグランドピアノが一つおいてあり、その周りを半円に囲むように観客席の折りたたみ椅子が並べられていた。
 観客100名ほど、ピアニスト本人、塩谷哲が目の前にいて、その指の動きがしっかりと見える。
最初は、何だソロか・・・とちょっとがっかり思ったものの、考えてみれば贅沢この上ないミュージシャンと段差や境目のないコンサートだ。
 クラッシックやポップスのなじみの旋律をアレンジしたものや、オリジナルのピアノバトル状の曲まで、しばしホッとする語りを挟み込んで、何か即興でやりましょうか?と観客からのリクエストに応えて演奏した曲のタイトルが『肩胛骨』だったりと、ソロの演奏でこれだけ楽しめたコンサートははじめてだった。
 資料によると東京芸大作曲科中退で、Sing Like Talkingの佐藤竹善とのユニット『SALT & SUGER』など幅広い活躍をしているようで、自ら「名前通り塩味の効いた音楽」というように、決してスパイスをきかせたという感じではなく、天然塩のようなじんわりと後味のする曲作りで、楽しく色んなことをやってくれる45才のピアニストだと感じた。
 *ステージ後にサイン会というのもほのぼのした感じで良かったな。
 

2011年5月29日日曜日

オラ! スペイン紀行 その3 そして、イエクラワイン

 昨夜の宴会の騒ぎが嘘のようにひっそりとしていて、ちょっとひんやりとしたイエクラの朝。
日中は30℃を超し、朝は10℃以下になる、この温度差がイエクラのワインを美味しくしているようだ。そんな朝、レストランと言うよりバールという感じのカウンターで朝食。大きなクロワッサンとカフェオレ、そして絞りたてのオレンジジュース。このバールは要は「Bar」の事だが、朝は簡単な朝食と目覚ましのエスプレッソ、昼はちょっとした定食、そして夜は延々と続くかのような社交場としての飲み屋となる便利な店で、私がクロワッサンをかぶりついている間に、これから仕事だというような町の人々が濃いコーヒーをキュッと一杯やって出て行った。


  前夜、宴会でみんな忙しいのか、誰もまともに相手してくれず、ホテルのオーナーらしきおじいさんがパンフレットを広げながら解説してくれたものを要約すると、人口3万人のこの町には、12社のワイン醸造会社があり、そのうち1社は別の会社と合併したので今は11社。見に行くならこことここが大きいのでお薦めと4つのワイナリーを教えてくれた。
 
 一件目のワイナリーは、ここで作ったワインをうちの近所のスーパーで出会ってYeclaというこの町を知るきっかけになったワイナリー『CASTANO』だが、残念ながら朝9時過ぎでは早すぎたようで、玄関から建物を見るだけにとどまった。


 2件目は、Yeclaでは一番大きなワイナリーで、大きなレストランも併設し、工場見学もできるとのことで訪問する。『BARAHONDA』http://barahonda.com/という会社で、ホンダがバラで売っているのか・・・と日本人には覚えやすい名前のためか、工場内を見学中に「これは日本向けに今ラベリングしてます」と見せられた。泉佐野の商社さんがオリジナルとして輸入しているようで、ちょっとうらやましく思ってしまった。
 実は、この工場見学は本来は前もって予約しないとできないようだが、半日付き合ってくれるという契約のタクシー運転手が「せっかく日本から見に来たんだからたのんまっせ!」とお願いしてくれて、それもしっかり英語の話せる案内嬢が施設内全てを回ってくれ、最後には正しいテイスティング講座までやってくれた。

 *大きなレストランでは前日大きな宴会があったとかで、今日はお休みとのこと↑



 *これがちょっとでぶっちょでトヨタ車に乗っているタクシー運転手↑

 それにしても、ワインが安い。というより、ドイツのワインを見てもわかっていたが、ヨーロッパをはじめワイン消費の多い国々では、決して特別な飲み物ではなく日々の食卓には欠かせない飲み物で、基本的な物価の安いスペインではことのほか安く感じる。要するに消費量の少ない日本人はワインを高く買いすぎているようだ。
 
 工場内施設を案内してくれたIrena嬢に、計8種類5ケース分くらいのワインを注文したいとメールしたら、運賃が本体の倍ぐらい掛かるし、日本に入ってからの関税も掛かるので、高くなって申し訳ないとの返事が来た。でも、イエクラワインのイメージが壊れないうちに日本で飲みたいので、高くなってもいいから計算してほしいと伝えると、それでもそんなに高くお金を出して飲むものじゃないから、日本の代理店にあなたの希望の品種を全部揃えて欲しいとリクエストするのでしばし待っていて下さいとメールが来た。なんとなく、九州の人が、安くて毎日飲めるから焼酎は欠かせない、といっているのと同じ感覚を受けて、正直な商売だと感心してしまった。いっそのこと、輸入代理店になりたいくらいだ。

 そして、もう一件、ホテルのオヤジさんが進めていたワイナリーの一つで、町の中心に近く歴史的には一番古いという会社『PURISIMA』

 直売コーナーには、なじみの客だろう、ポリタンクを持ってきて計り売りで買っていくお客さんが数人いた。
 この日の数時間で今回の旅の一番の目的が果たせたようだが、残念ながら飲みたいワインはひょいひょい持ち帰れず、送るにも相当なコストが掛かる。
 また、ここに来てしこたま飲むしかないかな・・・・

オラ! スペイン紀行 その2 いざ、イエクラへ

 スッキリ晴れて、暑くなりそうなバレンシアの朝。
窓からは街路樹(当然オレンジの木)の道を伝って行くと視界に昨日うろついた大聖堂あたりが望めた。
 幸運なことにバスターミナルがホテルのすぐ横で、これまたホテルのフロントのお兄ちゃんいわく「自動販売機があるから簡単でっせ!」とのことでターミナルチケット売り場に行くと、ヨーロッパ各地に行くいわば国際バスを得意としてるバス会社のカウンターがたくさんあって、それぞれのカウンターにまばらに客が並んでいる。
 ALSAという国内線大手のバス会社の自動販売機がぽつんと立っていた。「そうか、どこで迷ってもスペインにはALSAがあるさ!」などとつぶやいて、いざ買おうかという時に気がついた。自販機も当然スペイン語だ。でも、この手の自販機の表示される質問事項は万国共通のようでで、言葉が理解できなくてもイマジネーションで簡単に買えてしまった。
Yeclaの文字と数字だけしか判別できないが「イエクラ行き、ターミナル22番、座席E1、10:12発 12:38着 料金12ユーロ」とチケットには表示してあるのだろう。それにしても、2時間ばかり乗って12ユーロは安い!ちなみに大きなバスなのに乗客は8人だった。

 街中から抜けだし、郊外の一面オレンジ畑の風景を見ながら、高速をひた走り、何だかちょこっと建物が集まった場所に近付いてきた。だーれもいないバスターミナルにバスは停まり、運転手のおじさんがひと言「イエクラ」
 えっ、まだ予定の30分前だよ!と日本語で言っても通じるはずもなく、ぽつんと炎天下のバス停に放り出される。バスはこの先いくつかの町を回って目的地に行くらしい。


 仕方ないので、横のカフェ(というよりバールかな)貼ってあった町の地図をのぞき込み、高い教会の建物がないか見回して、とにかく歩いてみることにした。すでに気温は30度近いだろう背負ったリュックと背中の間に汗が流れるのを感じた。
 それにしても、街中は日曜日のせいか閑散としていて、商店街らしき道も店が全て閉まっているので、何屋なのかもわからない。
 そうか!考えてみたらここはスペイン。シエスタ(昼寝)の国じゃないか!暑い日中に外に出てうろつく人間は少なく、人々は昼寝に入っているんだろう。

 教会らしき高い建物を見つけ、それに向かって歩くと少し人通りが多くなってきた。
HOTELの文字が見えて、まさかホテルはシエスタじゃないよな、とおそるおそる入り「オラ!」とカウンターのおばちゃんに挨拶し、今夜一部屋空いてる?と指を一つ立てる。
それだけでほとんど理解できたようで、部屋のカギをほいっと渡されて、町の地図はないの?と聞くと、滅多に出さないような「観光パンフレット一式豪華ファイル入り!」を取り出してきて、観光名所らしき場所を一つ一つ説明してくれる。何を言っているのかほとんどわからないが、なぜだか理解してしまう。
 これまたイマジネーションの世界で、おそらく今日は色々あって忙しいものだからごめんね、という感じのことを言って、これからあるパーティか何かの飾り付けを作りながら、
最後に「朝食は横のレストランオーロラで食べてね、オーロラは私の名前だよ」というので、
「私の名前はイエクラですよ」というと
「あら、ま~、それはそれは。ちょっとパスポート貸して!コピーしておくわ」
とはしゃぎだした。

 外に出るとやけに教会付近が賑やかで、着飾った人々が一杯いた。
おそらく結婚式か祭りか、教会の入り口はごった返していて、どれが新郎新婦か、どれが神父かもわからない状況。



 町の中心部と思われる市庁舎前広場に来ると、こんなに人がいるのかと思うほどになり、
どうも何かの祭りをやっているようで、屋台も並び、簡易型回転木馬で遊ぶ子供達の姿、仮装している人々、街中の道をはさんで人形がつり下げられてあった。




 屋台にはオリーブ屋さんやアクセサリー屋、これ一本で子供は一日泣き止むかもと言う感じの巨大なお菓子(グミ)を売る店などがあった。



 さて、だいたいどんな大きさの町なのか確かめようと、ホテルのおばちゃんがしきりにPRしていた古代ローマの遺跡が町の裏の丘にあるというので汗をかきかき登って行くと、目的地はがっしりした柵で立ち入り禁止で、ここも日曜日だからなのかシエスタ中なのか、見ることができなかった。
 ただ、町の全景は見渡せて、ワインの産地だから丘陵地にブドウ畑が広がっているのかと見渡したがそれらしい風景はなく、地図を再度見たらこの町には川が無く、果たしてこんなところでワインができるのかと不思議に感じながら丘を下っていった。


 ホテルに戻ると、レストランの中から宴会場まで、ホテル中大騒ぎで、さっきの結婚式のパーティーか、お祭りの宴会かわからないが、人々はシエスタから起き出してきたようで、騒ぎは延々と続いていた。

オラ! スペイン紀行 その1 バレンシアで

 旅のきっかけというのは色々あるけど、
極めてめずらしい自分の名前と同じ名前の町に行ってみたいというのも一つの理由になるかな。
でも、本当にそんな町があるのだろうか、とスペイン地図を広げ「Yecla」という文字を見つけ、
「あら、ほんとにあるわ」ととにかく存在することは確認はして出掛けることにした。

 仕事で旅する以外は、世界中どこへ行くにも、「まあ、着いてからどうにかなるだろう」という考えは若い頃からほとんど変わらない。
 色々予約して現地へ着いて、想像するのと全然違う施設や場所だったりするとがっかりしてしまうので、現地の空気を感じながら町を歩き、町の構造を理解しつつその日の宿を探す。それなりの町なら観光案内所で色んな情報を集めるのも一つの楽しみ。

 そもそも、その町ではじめて会話する観光案内所の係員の笑顔が、その町のイメージになってしまうことも多い。

 ドイツでの仕事を片付けて、5月7日ドイツ・ミュンヘンからイベリア航空でバレンシアに飛ぶ。
バレンシアというとバレンシアオレンジ!というイメージしか無く、ソウルに着いたら空港からキムチの匂いがするように、ここでもオレンジの匂いぷんぷん、ミスオレンジが首にオレンジカラーのレイでも掛けてくれるのかと思いきや、残念ながらそれは無かった。
 というより、気持ちはすでにイエクラの町にあり、まずは空港の観光案内所に飛び込んだ。

 「イエクラにはどうやって行けばいいのだ?」とスーパーマンに変身する前のクラーク・ケントみたいなお兄ちゃんに詰め寄ると
 「オラ、ミスター。バスで2時間くらいだが、平日は1日2本しか便がないが、明日は日曜日だから4本ある」とのこと。鉄道がないのは地図で見て知っていたが、バスもそれだけの本数かいな、こりゃ相当田舎だなと感じる。

 とりあえず、この日だけは予約してあったホテルに荷物を置いて、町を散策する。
ヨーロッパの多くの町と同じく、この町もかつては城壁に囲まれた町のようで、旧市街に入るいくつかの門があり、そこから町の中心だろうと思われる教会の塔に向かって歩く。
 そうそう、ちなみに私はスペイン語は全くわからない。
若い頃、マドリードやバルセロナ、コルドバ、グラナダといった町を回ったがあまり記憶にない。
「オラ!」が「ハロー!」の事だというのはまず理解できた言葉だが、決して尻上がりの「オーラー!」という発音ではなく、日本の地方の方の使う一人称「おら・・・」に近いイントネーション。
 
 町の中心部にたどり着いたらしく、人が多くなり、大聖堂の前の広場では一雨あったのかイベント中断中という雰囲気で、もう一つの教会の方では陶器市の屋台が軒を連ね、色んな色の陶器が並べられていた。
 聞くところによるとバレンシア周辺はスペインでも米の一大産地で、その米を使ってあのスペイン料理のパエリアも名物のようだ。当然そんな料理には食器も欠かせないから、陶器も多く作られているようだ。


 それではと、夜はパエリアを食すかと、ホテルのフロントのお兄ちゃんに紹介してもらった古い町の小じゃれたレストラン『CANELA』に行くと、パエリアよりも明日出掛けるイエクラがワインの産地であることを思い出し、とりあえずワインは飲んでおくべきだと注文したのが『NO.12』というワイン。
 コース料理のパエリアが出てくる前に、美味しいオリーブとパンだけで充分できあがってしまった。