2013年11月4日月曜日
苦手なもの その1「バイキング」
そもそも並んで待つ、ということが大の苦手である。
ネズミやアヒルの闊歩する何とかランドの入場整理券待ち、これまた某わがまま次第放題の国からやってきたスマートフォンや新しいソフトの販売日の行列、Mのマークのハンバーガー屋のテイクアウトに並ぶ車の列、などなど、他人の勝手だからとやかく言うつもりはないが、コマーシャル戦略にまんまとはまっていながら、自分がさも特殊な人間だと勘違いして、間抜け面で列に並んでいる姿。残念ながら私にはとうてい出来ない世界。
嫌いだから近寄らないで避ければ良いだけだが、避けられないケースもある。
駅のチケット売り場、空港のセキュリティーチェック、そしてホテルでの朝食のバイキングとかビュッフェと呼ばれるもの。
それにしても、何で「バイキング」などと呼ばれるようになったのだろうか?みんなで一斉に食べ物に突撃するのが、北欧の海賊のスタイルなのだろうか?
調べると、昭和30年代にデンマークのレストランのスタイルを見て、かの帝国ホテルが名付けた和製英語だそうだ。デンマークの人々やバイキングの子孫の方たちはこのことを知っているのだろうか?デンマーク大使館に聞いてみたいものだ。
ホテルにチェックインして、「明日の御朝食はバイキングになっております」と言われると、しばし眉間に皺が寄ってしまい、近所に和風スタイルファーストフード屋さん、つまり牛丼屋さんはない?と聞きたくなる。
さて、朝のそのバイキングの時間帯になる。
エレベーターには、それらしき老夫婦、子供連れ家族、サラリーマン風おじさんなどが乗り込んできて、中にはホテルのスリッパなぞを履いてくる輩も居て、ピンクやグリーンの「朝食券」を手に握りしめていたり、胸のポケットからのぞかせたりしている。
「うっ、こいつらのんびりそうな顔してるな・・・」このあたりでもう列に並ぶ姿が浮かんでくる。
エレベーターの扉が開き、朝食会場に「私ら全然焦ってないもんね~」という感じでどやどやみんな移動していく。
会場の受付で係のお姉さんが「バイキングになっておりますので、ご自由にお取りください」などと声かけられると、「わかっているけど、どこが自由やねん!」と前の列を見て大きなため息をついてしまう。
所詮、前の日の残り物の再加工品や業務用パックの中のものを大皿にざっと空けただけの食事のネタで、しげしげと眺めて品定めするようなものはほとんど無いのに、大きな皿を片手にみんな行儀良く並んでいる。鮭とアジの切り身の選択にそんなに時間掛けてどうしようと言うんだ!と後ろから喚きたくなるし、サラダのドレッシングぐらいどれでも良いじゃないか!と前の人間を押し倒したくなる。
そんなときは、すこぶる「ご自由に」させていただくようにしている。
まずは、空の皿を持ちつかつかと人々を追い抜いて、列が無くても時間が掛かりそうな卵料理担当のコックのコーナーに行き、「目玉焼き、表裏とも焼いて」もしくは「オムレツ、タマネギとハムとチーズ入れて」と注文し、列に隙間のある場所のメニューを次々適当に取り、列の反対側にスペースがあれば逆流して皿に盛っていく、一度テーブルにその皿を持って行き、今度は比較的待つ人のいない主食(ご飯、パン類)のコーナーでご飯を盛り、ちょっど出来た卵料理を引き取る。
もちろん、並んでいる人々のご迷惑にならない動作は忘れない。
この時点でも一緒にエレベーターに乗ってきた老夫婦などは茄子の煮付けにしようか肉じゃがにしようか迷っていたりする。
もっとも、こんなことはほとんど食べ物に好き嫌いのない、「空腹が最大の美食」だと思っている私のような人種しかできないと思っている。
2013年10月1日火曜日
とりあえず記録として、百名山No.96 『赤石岳3,120m』No.97 『荒川岳3,141m』
9月21日
前日静岡駅に集合し、山中の細い道を2時間ちょっと車を走らせて到着した赤石温泉白樺荘。
そこから今回の山登りは始まるのだが、なんと愛用のカメラの調子が悪く、画像が覗けないし撮れない状況なので、今回は同行の村岡氏の撮影した画像がほとんどです。
それにしても、南アルプスの山々は登山口までのアクセスが大変で、そこにたどり着くまでに気持ちがちょっと萎えてしまう。
それもあり、端っからのんびり行こうや、と構えていたが、
一般車両が乗り入れられる限界の場所の直ぐ手前にある白樺荘から、登山口までの専用バスのバス停に出発したのは午前8時ちょっと前。夜明け前からもぞもぞ起き出して出発の準備をするのが当たり前の山登りの朝としてはきわめて異例で、ゆっくり朝飯をお腹に納めてのバス乗り場横の駐車場へ向かうと、何とビックリ!バスを待つ人の列が長くつながっていて、100人は優に超えていた。
こんな山に人が本当に来るのか?などとのんびりと構えていて、8時出発のバスに置いて行かれなければいいか、という感じで向かったのだが、この人だかり。これが登山ブームってやつなのか?
予定の8時を過ぎてもバスは来なくて、先頭の方に並んでいる人に聞くと、あまりにも待っている人が多いので、8時の便はすでにずいぶん前に出発してしまったとのこと。その上、一度の輸送量は28人乗りのマイクロバス2台と5~7人乗りのワゴン車3台、合計すると一度に輸送できるのは80人くらい。しかも、次の便は時刻表によれば10時半、ということはそのまた次の便12時発に乗ることになるとわかり、一気にあきらめムード。
陽がだんだんと高くなり暑くなってきた道路脇の日陰で、なんだかやけくそ気味にワインの小瓶を取り出して待ちました4時間。
この時点で、当初予定していた荒川岳~赤石岳のコースを、反対の赤石岳~荒川岳に変更を決める。
12時発のバスは28人を乗せて出発し、そのうちの半数近くの人間は約1時間かけて椹島(さわらじま)ロッジ手前の登山口に下ろされる。時刻は太陽が真上の午後1時。
以後、3日間、同じコースを歩くこの十数名と色んなところで顔を合わせることになる。
さて、登るとするか・・・・
植林地の山道なのでそれほど面白いとは言えない登山道をひたすら進み
最後の「歩荷返し」なる急坂を登り
日暮れ前にどうにか今夜の宿「赤石小屋」に到着
前日静岡駅に集合し、山中の細い道を2時間ちょっと車を走らせて到着した赤石温泉白樺荘。
そこから今回の山登りは始まるのだが、なんと愛用のカメラの調子が悪く、画像が覗けないし撮れない状況なので、今回は同行の村岡氏の撮影した画像がほとんどです。
それにしても、南アルプスの山々は登山口までのアクセスが大変で、そこにたどり着くまでに気持ちがちょっと萎えてしまう。
それもあり、端っからのんびり行こうや、と構えていたが、
一般車両が乗り入れられる限界の場所の直ぐ手前にある白樺荘から、登山口までの専用バスのバス停に出発したのは午前8時ちょっと前。夜明け前からもぞもぞ起き出して出発の準備をするのが当たり前の山登りの朝としてはきわめて異例で、ゆっくり朝飯をお腹に納めてのバス乗り場横の駐車場へ向かうと、何とビックリ!バスを待つ人の列が長くつながっていて、100人は優に超えていた。
こんな山に人が本当に来るのか?などとのんびりと構えていて、8時出発のバスに置いて行かれなければいいか、という感じで向かったのだが、この人だかり。これが登山ブームってやつなのか?
予定の8時を過ぎてもバスは来なくて、先頭の方に並んでいる人に聞くと、あまりにも待っている人が多いので、8時の便はすでにずいぶん前に出発してしまったとのこと。その上、一度の輸送量は28人乗りのマイクロバス2台と5~7人乗りのワゴン車3台、合計すると一度に輸送できるのは80人くらい。しかも、次の便は時刻表によれば10時半、ということはそのまた次の便12時発に乗ることになるとわかり、一気にあきらめムード。
陽がだんだんと高くなり暑くなってきた道路脇の日陰で、なんだかやけくそ気味にワインの小瓶を取り出して待ちました4時間。
この時点で、当初予定していた荒川岳~赤石岳のコースを、反対の赤石岳~荒川岳に変更を決める。
12時発のバスは28人を乗せて出発し、そのうちの半数近くの人間は約1時間かけて椹島(さわらじま)ロッジ手前の登山口に下ろされる。時刻は太陽が真上の午後1時。
以後、3日間、同じコースを歩くこの十数名と色んなところで顔を合わせることになる。
さて、登るとするか・・・・
植林地の山道なのでそれほど面白いとは言えない登山道をひたすら進み
最後の「歩荷返し」なる急坂を登り
日暮れ前にどうにか今夜の宿「赤石小屋」に到着
9月22日
一夜明けて、昨日とは気合いの入れ方がちょっと違う朝。
相変わらず良い天気で、昨日の4時間半の山小屋に到着するだけが目的とはうって変わり、
今日は百名山を2座登頂し、10時間近くの尾根沿いの道。自然と気合いが入る。
尾根と言っても決して建物の天井みたいに同じ高さの場所をまっすぐ歩いている訳じゃなく、いくつもの山を登ったり下りたり。
山の地図によればこの日の目的地千枚小屋にたどり着くまでに、赤石岳~小赤石岳~前岳~中岳~荒川岳(荒川東岳)~丸山~千枚岳と山が連なっている。
とりあえず、夜明けと共に赤石小屋を出発。
しばらくするとその名の通りの「富士見平」朝日の中の富士山。
そして、今日最初の目的地「赤石岳」が見えてくる。
「ラクダの背」と呼ばれる結構急な沢沿いの道を進み、見上げると赤石岳への分岐の稜線が見えてくる。
およそ3時間で、先ず一つ、赤石岳。 富士山もくっきり。
ここからが稜線の道。山の地図には「稜線の空中散歩」と書いてある。
で、小赤石岳。富士山がしつこく着いてくる。
まだまだ、これから空中散歩
しばし下って石川県人にはちょっと気になる名前の「大聖寺平」
振り向くとさっきまで居た「小赤石岳」
下ったら今度は登り
中岳とぽっかりと異空間を思わせる避難小屋
ちょっと霧が出てきて、今日2座目の百名山「荒川東岳」
ここで出発して8時間経過。
ごつごつした稜線の道から、穏やかな形のその名も「丸山」
もう少しだ、頑張るべ!と深呼吸。
標高2800m近辺でも鹿は登ってくるようで、高山植物が荒らされないように柵が張り巡らされている。
そして、千枚岳。朝からペースメーカーのようにず~っと私たちの先を歩いていた健脚カップル。
後ろに見えるのは荒川東岳と丸山
午後5時ちょっと前、約11時間半掛けて千枚小屋に到着!
月も夕陽もきれいで、ここまで来れば後は下りるだけ。
ちょっと寒さを感じながらビールでご苦労さんの乾杯!
9月23日
千枚小屋からのご来光
とりあえず、2座こなしてホッとして下山。
2013年9月16日月曜日
三度目の正直。台風直前の百名山No.95『鷲羽岳(わしばだけ・2,924m)』
山に登る人にはそれぞれ色んな思いがあり、一歩一歩重い登山靴を持ち上げて歩みを進めていく。
四季折々の自然の風景を肌で感じ取りたい、日常生活のいろんな気苦労から解放されたい、色んな地方の登山好きの人々と知り合いたい、自分の体力と精神力の限界を知りたい、はたまた、そこに山があるから登りに行く、などなど、人それぞれである。
私の場合はどうだろう。
四季の移り変わりや木々や土のにおい、鳥や小川の音に体が純化されていく感じがして、したたる汗に自分の存在を改めて確認する、などと言ったらかっこよすぎるか・・・・。
一番は「一人になりに行く」ことかな。
日々の社会生活の中で、多くの人に出会い、挨拶をして、利害関係が絡み合う中、気を使って、落胆したり喜んだり怒ったりするわけだが、そんなわずらわしさの種々雑多も残念ながら社会人である以上簡単には放棄できない。そこでしばし一人になり、仙人にでもなった気分でリセットしに行く、といったところか。数人のグループで登っていても、登っている間は黙々と一人の時間に浸れるのが登山の良いところかもしれない。
でも、世の中には反対に一人が嫌いで登りに来ている方も多いようだ。
どうしたわけか、私は話しかけやすい雰囲気を持っているのか、全然知らない土地で初めて歩いている海外の街角でもよく道をたずねられるが、山でも同じように声を掛けられるみたいだ。
山小屋での夕食時など、さて、たいしたメニューでもないが明日のために腹に収めておくか、と醤油挿しを片手に持った瞬間。「今日はどちらからですか?」と声がして、「えっ?私ですか?」と指にはりついた醤油の粘つきを気にしながら今日のルートを反芻して話したりする。
近々の山の天気や登山道の状況などは地図やガイドブックには載ってないので、そこを実際に歩いた方に聞くのが一番で、その情報を元に自分の次のコースを検討し直すこともしばしばあるので、それはそれで見たこと感じたことを伝えるのだが、話しかけてくる方の中には、情報を聞いた後の話が長くなる方も結構いる。要は、自分の体験談からお進めのコースや注意点を話し出すのだが、それがいつの間にか武勇伝や自慢話に発展していて、酎ハイの缶などを片手に柿の種をほおばりながら話は延々と続いていく・・・・・。
この人、日常では会社でも恵まれた環境にいなくて、奥さんや子供にも相手にされずひとりぼっちなのかな、などと感じながらも、いつ自分がこうなるかわからないなという自分の姿も時々頭をかすめる。
ところが「いや~、まいったなあ、これはなかなか逃げられないな・・・」と思ったそんなとき、どこからとも無く「そこの尾根なら私も去年やりましたよ!」と今まで知らん顔していた隣のグループのおばちゃんの一人が振り返りざま突然会話に参加し、やがてお互いの口から柿の種とピーナッツを飛ばし合いながら会話は白熱したりする。この手のおばちゃんは、たいがい横で小さく頷くだけの旦那さんをお供にしている。
私はやった、ラッキー!と小躍りして、「ちょっと天気予報見てきます」と言ってその席をさりげなく去るのだ。
さて、今回の山行は三連休を使い、双六岳~三俣蓮華岳~鷲羽岳を縦走するコース。
問題は台風が近づいていて、途中どんな状況になるかわからないという、イレギュラー大好きな私にはウキウキする登山。
9月14日朝6時。新穂高ロープ-ウエイ下の駐車場を、ちょっと怪しげな雲を見上げて出発。
しばらくすると、確か登山道が崖崩れか何かで閉鎖されていた笠ヶ岳への登山道「笠新道」入り口にたどり着き、「な~んだ、もう通れるのか」と進む。
歩き出して約1時間で林道脇にあって山小屋と言えるのかな?と感じるほど快適な雰囲気の「わさび平小屋」に到着。冷えた瓶ビール共々、この後お世話になるとは、この時全く考えもしなかった。
林道から登山道「小池新道」に入る。やっぱり林道を自転車で来る人はいるんだな。
大きな石の道が続き「秩父沢」
どれがその石なのかわからないが「チボ岩」と続き
その名の通り、ウドの花が一面の「シシウドヶ原」
秋の季節は青や紫の花が多いがその典型的なトリカブトもしっかり咲いている。
「クマの踊り場」なる場所 。何踊りかいな?
そして、この景色を見に来る方が多いので人気の「鏡平池」
正面の槍ヶ岳が湖面に映るいわゆる逆さ槍は朝が一番の見頃とか。
池の裏の鏡平山荘で昼食と山荘特製かき氷で英気を養い、今日の宿泊地双六小屋にたどり着く。
北アルプスの縦走の中継地点のこの小屋は、大きな別棟も建て増ししたようで大きな山小屋。
ここまでとりあえず台風の影響での雨もなく一安心。
9月15日朝6時出発、夜中に雨が屋根をたたく音が聞こえたものの、霧雨が時折顔に感じる程度の空模様の中、双六岳に向かう。巻道との分岐点。後ろに三俣蓮華、鷲羽が見える。
雲が山々を速い速度で流れていき、景色が刻々と変わる。
足下を突然雷鳥が通り過ぎる。
双六岳への道、振り返ると槍ヶ岳
双六小屋から約1時間、槍ヶ岳をバックに双六岳頂上
次は三俣蓮華へ、今度はイワヒバリが目の前に来て、誘導するように飛び跳ねる。
三俣蓮華岳頂上 。回りの霧が濃くなってくる。
小雨が時折降る中、目標の鷲羽岳がどっしりと姿を現す。その麓には三俣山荘。
これまで二度鷲羽岳には登れなかった。
一度目は土砂降りの中、雲ノ平から水晶岳に登り、ずぶ濡れで水晶小屋に着いたものの、地図では直ぐそこの2時間ではあるものの、全く景色が見えない天候の中に飛び込む勇気が無く行けず。
二度目は黒部五郎~三俣蓮華~鷲羽岳の予定が体長悪く中断。
今度こそはの三度目。
雨が降り出した三俣小屋から
風も相当強くなる中、400mの標高差を一気に鷲羽頂上へ。
にっくき鷲羽に拳でポーズ。 2900mを超えているだけにちょっと高山病気味。
鷲羽側から見た三俣小屋
と、このあたりでカメラの調子が悪くなり、雨も時折激しくなって、どうにか双六小屋まで下り、昼食に小屋の牛丼をがっつく。
ここまでで本日の歩き7時間半。時間はまだ14:30、台風の影響を考えると今日は行けるところまで行こう!と言うことで、牛丼の紅ショウガのにおいを漂わせて更に1時間半下り鏡平山荘へ。
鏡平山荘では登りの時のかき氷の賑わいはなく、人が全くいなくて、それもそのはずほとんどの方が下山してしまったとのこと。
小屋に入るといきなり条件付きの宿泊を言い渡される。その条件とは、明朝に掛けて台風がほぼ直撃が予想され相当の雨が降ると思われる。そのため、下山は登山道の安全を確認してからの行動になり、その確認作業は明日の午後になる見込みで、従って下山はその後、もしくはもう一泊していただくことになる、というもの。
明日のご予定が気になる方は雨の降ってない今下山した方が良いとのことで、急遽あの瓶ビールの冷えたわさび平小屋まで下ることになる。
「こんな所歩いたっけ?」と何度も言いながら最後はヘッドランプを付けて午後6時過ぎわさび平小屋に到着。
朝6時に双六小屋を出たので、この日は12時間歩いたことになる。
ちょっと驚いたのはさすがに林道の脇にある山小屋だけに物価が安く、行きの時に見たあの瓶ビールをいただける。しかも、ここには温泉でないがお風呂まで付いていて、汗を流してまた瓶ビール!夜半から台風の影響で雨脚が強くなったので、残り物をかき集めての暗闇での夕食のほんのしばしの休息の時間だったが、どうにかここまで下りてきて良かった!
四季折々の自然の風景を肌で感じ取りたい、日常生活のいろんな気苦労から解放されたい、色んな地方の登山好きの人々と知り合いたい、自分の体力と精神力の限界を知りたい、はたまた、そこに山があるから登りに行く、などなど、人それぞれである。
私の場合はどうだろう。
四季の移り変わりや木々や土のにおい、鳥や小川の音に体が純化されていく感じがして、したたる汗に自分の存在を改めて確認する、などと言ったらかっこよすぎるか・・・・。
一番は「一人になりに行く」ことかな。
日々の社会生活の中で、多くの人に出会い、挨拶をして、利害関係が絡み合う中、気を使って、落胆したり喜んだり怒ったりするわけだが、そんなわずらわしさの種々雑多も残念ながら社会人である以上簡単には放棄できない。そこでしばし一人になり、仙人にでもなった気分でリセットしに行く、といったところか。数人のグループで登っていても、登っている間は黙々と一人の時間に浸れるのが登山の良いところかもしれない。
でも、世の中には反対に一人が嫌いで登りに来ている方も多いようだ。
どうしたわけか、私は話しかけやすい雰囲気を持っているのか、全然知らない土地で初めて歩いている海外の街角でもよく道をたずねられるが、山でも同じように声を掛けられるみたいだ。
山小屋での夕食時など、さて、たいしたメニューでもないが明日のために腹に収めておくか、と醤油挿しを片手に持った瞬間。「今日はどちらからですか?」と声がして、「えっ?私ですか?」と指にはりついた醤油の粘つきを気にしながら今日のルートを反芻して話したりする。
近々の山の天気や登山道の状況などは地図やガイドブックには載ってないので、そこを実際に歩いた方に聞くのが一番で、その情報を元に自分の次のコースを検討し直すこともしばしばあるので、それはそれで見たこと感じたことを伝えるのだが、話しかけてくる方の中には、情報を聞いた後の話が長くなる方も結構いる。要は、自分の体験談からお進めのコースや注意点を話し出すのだが、それがいつの間にか武勇伝や自慢話に発展していて、酎ハイの缶などを片手に柿の種をほおばりながら話は延々と続いていく・・・・・。
この人、日常では会社でも恵まれた環境にいなくて、奥さんや子供にも相手にされずひとりぼっちなのかな、などと感じながらも、いつ自分がこうなるかわからないなという自分の姿も時々頭をかすめる。
ところが「いや~、まいったなあ、これはなかなか逃げられないな・・・」と思ったそんなとき、どこからとも無く「そこの尾根なら私も去年やりましたよ!」と今まで知らん顔していた隣のグループのおばちゃんの一人が振り返りざま突然会話に参加し、やがてお互いの口から柿の種とピーナッツを飛ばし合いながら会話は白熱したりする。この手のおばちゃんは、たいがい横で小さく頷くだけの旦那さんをお供にしている。
私はやった、ラッキー!と小躍りして、「ちょっと天気予報見てきます」と言ってその席をさりげなく去るのだ。
さて、今回の山行は三連休を使い、双六岳~三俣蓮華岳~鷲羽岳を縦走するコース。
問題は台風が近づいていて、途中どんな状況になるかわからないという、イレギュラー大好きな私にはウキウキする登山。
9月14日朝6時。新穂高ロープ-ウエイ下の駐車場を、ちょっと怪しげな雲を見上げて出発。
しばらくすると、確か登山道が崖崩れか何かで閉鎖されていた笠ヶ岳への登山道「笠新道」入り口にたどり着き、「な~んだ、もう通れるのか」と進む。
歩き出して約1時間で林道脇にあって山小屋と言えるのかな?と感じるほど快適な雰囲気の「わさび平小屋」に到着。冷えた瓶ビール共々、この後お世話になるとは、この時全く考えもしなかった。
林道から登山道「小池新道」に入る。やっぱり林道を自転車で来る人はいるんだな。
大きな石の道が続き「秩父沢」
どれがその石なのかわからないが「チボ岩」と続き
その名の通り、ウドの花が一面の「シシウドヶ原」
秋の季節は青や紫の花が多いがその典型的なトリカブトもしっかり咲いている。
「クマの踊り場」なる場所 。何踊りかいな?
そして、この景色を見に来る方が多いので人気の「鏡平池」
正面の槍ヶ岳が湖面に映るいわゆる逆さ槍は朝が一番の見頃とか。
池の裏の鏡平山荘で昼食と山荘特製かき氷で英気を養い、今日の宿泊地双六小屋にたどり着く。
北アルプスの縦走の中継地点のこの小屋は、大きな別棟も建て増ししたようで大きな山小屋。
ここまでとりあえず台風の影響での雨もなく一安心。
9月15日朝6時出発、夜中に雨が屋根をたたく音が聞こえたものの、霧雨が時折顔に感じる程度の空模様の中、双六岳に向かう。巻道との分岐点。後ろに三俣蓮華、鷲羽が見える。
雲が山々を速い速度で流れていき、景色が刻々と変わる。
足下を突然雷鳥が通り過ぎる。
双六岳への道、振り返ると槍ヶ岳
双六小屋から約1時間、槍ヶ岳をバックに双六岳頂上
次は三俣蓮華へ、今度はイワヒバリが目の前に来て、誘導するように飛び跳ねる。
三俣蓮華岳頂上 。回りの霧が濃くなってくる。
小雨が時折降る中、目標の鷲羽岳がどっしりと姿を現す。その麓には三俣山荘。
これまで二度鷲羽岳には登れなかった。
一度目は土砂降りの中、雲ノ平から水晶岳に登り、ずぶ濡れで水晶小屋に着いたものの、地図では直ぐそこの2時間ではあるものの、全く景色が見えない天候の中に飛び込む勇気が無く行けず。
二度目は黒部五郎~三俣蓮華~鷲羽岳の予定が体長悪く中断。
今度こそはの三度目。
雨が降り出した三俣小屋から
風も相当強くなる中、400mの標高差を一気に鷲羽頂上へ。
にっくき鷲羽に拳でポーズ。 2900mを超えているだけにちょっと高山病気味。
鷲羽側から見た三俣小屋
と、このあたりでカメラの調子が悪くなり、雨も時折激しくなって、どうにか双六小屋まで下り、昼食に小屋の牛丼をがっつく。
ここまでで本日の歩き7時間半。時間はまだ14:30、台風の影響を考えると今日は行けるところまで行こう!と言うことで、牛丼の紅ショウガのにおいを漂わせて更に1時間半下り鏡平山荘へ。
鏡平山荘では登りの時のかき氷の賑わいはなく、人が全くいなくて、それもそのはずほとんどの方が下山してしまったとのこと。
小屋に入るといきなり条件付きの宿泊を言い渡される。その条件とは、明朝に掛けて台風がほぼ直撃が予想され相当の雨が降ると思われる。そのため、下山は登山道の安全を確認してからの行動になり、その確認作業は明日の午後になる見込みで、従って下山はその後、もしくはもう一泊していただくことになる、というもの。
明日のご予定が気になる方は雨の降ってない今下山した方が良いとのことで、急遽あの瓶ビールの冷えたわさび平小屋まで下ることになる。
「こんな所歩いたっけ?」と何度も言いながら最後はヘッドランプを付けて午後6時過ぎわさび平小屋に到着。
朝6時に双六小屋を出たので、この日は12時間歩いたことになる。
ちょっと驚いたのはさすがに林道の脇にある山小屋だけに物価が安く、行きの時に見たあの瓶ビールをいただける。しかも、ここには温泉でないがお風呂まで付いていて、汗を流してまた瓶ビール!夜半から台風の影響で雨脚が強くなったので、残り物をかき集めての暗闇での夕食のほんのしばしの休息の時間だったが、どうにかここまで下りてきて良かった!
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